2021年10月9日
最愛の娘へ
メリルさん
 子供を持つことに興味がなかった私が、いきなり頭を金づちで殴られたようなショックを受けたのは、結婚して5年目の頃でした。アメリカ赴任から帰ってすぐ旦那様が脳腫瘍になったのです。手術を待つ彼のベッド脇で、突然私は「子供をつくろう。この人の命をつなごう。父親としての喜びを知ってもらおう」と思ったのでした。
 手術の翌々年、あなたは生まれました。父親になった彼は不器用極まりなく、オムツ交換や、食事の世話など到底任せられるレベルではなく、私は子育てに孤軍奮闘しました。しかし、彼はお風呂に入れたり、少し大きくなったら毎週のようにスキーに連れていってくれたり、ミュージカルやテーマパークへも一緒に行きました。どの写真も幸せそのもの!彼はありったけの愛情を注ぎました。体が動くうちは「脳腫瘍です。何かあったら救急車を呼んでください」という手紙を財布に入れ通勤電車に乗って仕事に行ってくれました。
 そうやって私たちを自分の命をかけて守ってくれました。手術から15年で、彼は力尽きましたが、きっとあなたは彼の愛の深さを知っているはず。愛って、与えても、もらっても幸せなんだね。あなたにもそういう出会いがありますように!