2020年4月25日
大好きな弘(こう)君へ
田中道子さん
 バァバは、30年ほど前にジィジの仕事で、弘君と同じ位の年齢の息子、辰(たっ)ちゃんを連れて、南インドに住んでいたことがあります。40度を超す猛暑と、度々の停電。安全な水と食料の確保に日々格闘していました。そんなバァバの前に現れたのが、子守りのデヴィさんでした。
 面接の日、サリー姿で肌の色も違うデヴィさんに辰ちゃんは、泣きもせずすぐ抱っこされ笑ったのです。それだけのことで、バァバの心の緊張と不安がぱっと晴れたのを、今でも覚えています。その日から、デヴィさんは、辰ちゃんを我が子のように世話をしてくれました。
 最近、弘君といると、デヴィさんのことを思い出します。大理石の床にあぐらをかき、辰ちゃんを抱きながら、穏やかに楽しそうに笑っているデヴィさん。外では他の子守りさんたちに辰ちゃんの自慢話ばかりするデヴィさん。数年後、私たちの帰国が決まってからの寂しそうなデヴィさん。まるで今のバァバのようですね。
 バァバはデヴィさんに心から感謝をしながら、弘君の子守りを愛情と責任をもって頑張りたいと思っています。でも一つだけ。辰ちゃんになかった、弘君のイヤイヤ期への対処。心の中のデヴィさんに尋ねても答えてくれません。弘君、どうかお手柔らかにね。