2016年6月4日
おなかの中のあなたへ
Kさん
 東日本大震災から3月で5年がたった。あの時はまだ、高校生だった私がもうすぐ母親になる。ママの実家は福島県のとある町で現在、勝手に出入りは許されない。あの時に負った心の傷は大きくて、思い出すといまだに涙が止まらないんだ。
 パパと出会ったのは震災から2年後、県外の避難先でできた友達を通じて紹介してもらった。福島出身と言ったものの、自分の地元の事が言えず悩んでいた。高校生の時に転入を経験して、優しく声をかけてくれる人もいれば、放射能がどーのこーのと陰口をたたかれたこともあったから。自分の事を他の人に言わないということが、いつの間にか自分の中のルールになっていたんだ。
 だけど、ついにパパに伝えた。するとパパからは「だからどうしたの?」と、思いがけない言葉が返ってきてあ然とした。気にしてるのはもしかして自分だけだった? そう思うと心がパッと開けた。
 それから3年がたち、あなたをおなかに授かった。あの日、震災がなかったらパパに出会うこともなく、あなたを授かる幸せもまだ知らなかった。出産まであと1カ月。おなかでのんびり大きくなって、元気に出てきてね。あなたが大きくなってママの実家はどこ? と聞いてきたら、胸をはってママの地元の事を話すよ。その頃にはパパと三人でママの育ったところを見に行けるといいね。